あるラーメン屋さんの相続 その2
遺産分割協議に弁護士さんは必要でしょうか?
争族で得たものと失ったもの
成功する相続のコツとは?
遺産分割の協議に弁護士は必要ですか?
前回のつづきです。
妹と長男は、話し合いましたが、妹の
「私には相続財産の2分の1をもらう権利がある」という主張は変わりません。
それから1週間後、妹は突然弁護士を伴ってやってきました。
「今後の協議は、すべて弁護士に任せるから、これからはこの弁護士を通じて 話して欲しい」
とのこと。
相続協議に弁護士を入れることは、絶対にやってはいけないことの一つと
言われています。
なぜなのでしょうか?
それは、弁護士さんの仕事というのは、この場合
「依頼人の利益を最大限にすることが仕事だからです。」
依頼人つまり妹(長女)の利益だけを最大にすることです。これでは、もう
まとまるものも、まとまらなくなってしまいます。
相続アドバイザーと弁護士の違いが、ここにあります。
我々は、この相続全体を見渡して、まず兄妹の縁を切らさないことを最大の課題と
して取り組みます。
個人個人の取り分は、その後のことです。
弁護士さんは、何も悪くありません。先程も言った通り弁護士さんの職務は
法律に照らし合わせて依頼人を守る事だからです。
相続の遺産分割協議の場に弁護士さんを連れてきたことが間違いなのです。
裁判の結果は?それで得たものとは?
結局、この相続は兄妹の間で裁判になってしまいました。
裁判になると、最後は必ず法定相続分通り分けなさいとなるのです。
妹の主張した2分の1ずつわけるということです。
それをするには、ラーメン屋さんの店舗兼自宅を売却して、それを2分の1づつ
分けるしか方法はありません。
長男夫婦は、仕事と住む場所を同時に失います。
そして妹とも妹家族とのお付き合いも、無くなりました。
お父さんの時代から、家族で協力して守ってきたお店も終わりです。
多くのお客さんも悲しみます。
この妹さんは、なにを手に入れ、なにを失ったのでしょうか?
手に入れたのは、幾ばくかのお金!だけです。
失ったのは、お父さんがつくって、みんなで支えてきたお店、実家。
兄夫婦との絆。妹を知っているお客さん初め周りの人たちの信頼。
そして、なによりこの妹の中学生と高校生になる子供たちからの母親を尊敬する
気持ちです。
中、高校生になれば自分の母親が実の兄に対して、またおじいちゃん、おばあちゃんの
あのラーメン屋さんに対してなにをしたのか、もうわかります。
この子たちは、成人した時に自分の母親のことをどう思うでしょうか?
母親が教えた「自分の権利」を守ることが、他のなによりも大事なんだと
学習したのでしょうか?
どうすればよかったのか?
相続対策は、本人(被相続人)が、亡くなってからできることは限られます。
生前にやっておかなければ、争族を防げないケースがほとんどです。
このケースの場合、お父さんが生前にお店と自宅の土地建物を長男に譲るという
遺言状を書いておいたら、この悲劇は防げた可能性が高かったと思います。
そして、長女には長女を受取人とする生命保険に入っておく。
お母さん、子供たち2人を前に、自分の思いも伝えていたとしたら、
妹も反対することはなかったと思います。
テレビなどで毎日のように個人の受け取る権利を放送しています。
法律問題を取り上げる番組も多くあります。
この妹さんもいつのまにか、そういう考えに影響を受けてしまったのかも知れません。
今頃は、後悔しているのかもしれませんが、決して、もう元通りにはならないのです。
このラーメン屋さんの例でもわかるとおり遺産分割において法定通りに分けることが、
必ずしもベストな選択だとは私は思いません。
時には「不公平な分け方が公平」ということが、相続の場面では多くあります。
一番大切なのは、「譲り合いの心」だと相続アドバイザー協議会の野口先生は
教えてくれます。
きれいごとではなく、それが本当の意味で成功する相続のコツだからです。