入居者が残していった家財の処分について
自力救済禁止の原則とは?
どのような手続きをして残置物を処分すればいいのか?
家財の処分手続きは?
前回の「家賃滞納 夜逃げ 家具の処分」の続きです。
「自力救済禁止の原則」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
自己の権利を侵害された権利者が、法律の手続きによらず実力行使をもって
権利を実現することを「自力救済」と言います。
日本はじめ近代国家では、自力救済は原則として禁止されています。
自力救済によって紛争の解決を行うことを認めれば、過度の暴力が用いられたり、
権利がないのに実力行使がなされたりといったことが起こりうるため、
社会秩序の維持が難しくなります。
私人の権利の実現は、司法手続きを通じて行う必要があり、
自力救済は不法行為となってしまう可能性があるのです。
自転車を貸して相手がなかなか返してくれない場合に、相手の家に行って勝手に
その自転車に乗って帰ることは自力救済にあたります。
盗まれた自転車を街で見つけた場合にも同様です。
この場合、自転車の所有権を持っているのは自分ですが、自転車は貸した相手や
盗んだ人に占有されている状態です。
占有しているものはその人の財物とみなされるため、勝手に持ち帰ると窃盗罪に
問われる可能性があるのです。
アパートの賃料を払わない借主に対し、貸主が借主の留守中にカギを変えてしまい
締め出すとか、借主の同意ないまま荷物を引き払ったり追い出したりする行為も
自力救済禁止のルールに反します。
では、どのような手続きをすれば残置物の処分ができるのでしょうか?
まずは、賃貸借契約の解除、そして物件の明け渡しをしてもらうことです。
相手方がいなくても意思表示の効果が発生するように公示による意思表示という方法が
認められています(民法第97条の2)。
相手方の最後の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立て、裁判所の掲示場に解除の
意思表示を掲示してもらうのです。
その掲示されたことが官報に掲載されてから2週間が経過すると意思表示が相手方に
到達したことになります。
有効な解除を行えば、借り主の残していったテレビや家具を処分して、
賃料の一部としてもらうことができるかというと、裁判所を通じて強制執行を
しなければならず、貸し主が勝手に処分することはできません。
つまり、部屋の明け渡しを求める裁判を提起し、明け渡しを命ずる判決に基づいて
強制執行手続を取らなければならないのです。
具体的には執行官が借り主の残していったテレビや家具を部屋から運び出すことに
なります。この時、明け渡しを求める裁判で未払賃料を支払えという判決も
得ておけば、借り主の残していった家具を差し押さえて競売にかけ、
競売代金を受領して未払賃料の一部とすることは可能です。
また、この続きは次回の不動産ブログでやることにします。