相続における公平と平等について
相続における公平と平等とは?
野口レポートから
平等と公平のすき間をうめるものは?
相続が発生すると、相続人間で遺産分割協議というのがなされます。
これは、資産がたくさんあっても、一つしかなくても同じです。
兄弟間でスムーズにいく相続もあれば、残念ながら「争続」になってしまい兄弟姉妹の
縁まで失ってしまう例もあります。
相続アドバイザーになる過程において、相続アドバイザーの仕事において
一番重要なのは、この兄弟姉妹の縁を切ってしまわないようにすることだと教えられ
ます。
一人の相続人の利益だけを考えるのではなく、相続人全員に納得してもらうのは
簡単ではありません。
最近のテレビの法律番組などで弁護士さんが、均分相続(資産を法定相続分どおりに
わけること)の話をします。
法律的には間違いありませんが、実際の相続の場面ではそんな簡単に割り切れる
ものばかりではありません。
皆さんがよく相続の場面で主張される「平等に」ということと「公平に」という
ことを勘違いしているのではと思ってしまうことがあります。
最後に相続における平等と公平について私の師であります相続アドバイザー協議会の
野口賢次先生のレポートをご紹介します。
”平等と公平はよく使われる言葉です。似ていますが意味は違います。
どう違うかと聞かれてもよくわかりません。
辞書を引いてみました。平等⇒ 差別がなく等しいこと。
公平⇒ 偏らず中正なこととあります。
これでは違いがよくわかりません。単純に考えてみると答えが出てくることがあります。
適切かどうかは別として、身近なところでお正月のお年玉を例に平等と公平の違いを
考えてみましょう。
平等⇒ 袋のなかに、小学生が1万円、中学生が1万円、高校生が1万円入っていたら
平等です。が、そんな親はいないでしょう。
公平⇒ 袋のなかに、小学生が3000円、中学生が5000円、高校生が1万円
入っていました。一般の親が共通し持っている知識と分別であり、これが公平だと
思います。
ある相続を例にとってみます。相続人は長男・二男・長女の3人です。
長男が親の世話をし、親戚付き合いも引き受け、墓守もしています。
また3年にわたり親を在宅介護し最後を看取りました。
介護は肉体的に精神的に大きな負担を強いられ、介護した者でなければその苦労は
わかりません。状況をふまえ考えれば、長男が厚めに相続するのは自然ではないかと
思います。
ところが現在の法律は「均分相続」です。親戚付き合いや墓守はもちろん、
介護にしても特別な寄与(壮絶な介護)以外、通常の介護では寄与分として
相続分に反映しません。
「均分相続」は「公平相続」ではなく「平等相続」です。
この認識は重要です。他の兄弟が譲らず権利を主張したら、長男の相続分は3分の1
です。理不尽と思っても常識は法律に勝てません。
法律で決まっている相続分を変えられる人が1人だけいます。
それは被相続人になる人です。方法もひとつしかありません。
それが遺言です。平等と公平のすき間を埋めるのは遺言しかありません。
もし公平を求めるなら遺言の作成は必須です。
財産は預貯金だけでなく、不動産、動産、株式、美術品など、多岐にわたり、
価値観は相続人により違ってきます。
これも遺産分割を難しくします。公平な財産分けは至難の業です。”
(NO286平等と公平の難しさ 野口レポートより抜粋)