不動産売買のトラブルについて その2
意思能力がない方の不動産売買は無効です。
本人確認の大切さ
意思能力とは?
前回は、重要事項説明に関係するトラブルについて見てみました。
それに次いで多いのは、契約の解除に関するトラブルです。
この契約の解除については、「不動産売買の解約について」で2020年
5月7日、11日、14日と3回に分けて解説していますので、ご興味のある方は、
そちらをご覧ください。
今回は、これから増えてくるだろうと思われる「意思能力」のない方の
不動産売買のトラブルについて考えてみます。
「意思能力」とは、法律用語で、自分の行為によってどのような法律的な結果が
生じるか判断できる能力をいいます。
認知症などで「意思能力」が無くなっている場合には、不動産は売却できません。
「意思能力」がない人が不動産の売買契約を結んでも、契約は無効です。
「不動産を売却したら所有権が買主に移転し、代わりに代金を受け取る」
ということを所有者がはっきり認識できていないときには、不動産を売却することは
できないのです。
時々、お子さんが認知症の親の土地を売却したいという相談があります。
実際には、認知症の判断は非常にむずかしいことがあります。はっきりとお子さんが
「親が認知症だけど不動産を売れるか?」と聞いてくれればいいのですが、
そもそも認知症だと不動産の売買ができないということをご存知ありませんので
後になって本人と面談した時にわかる場合もあります。
また軽度の場合ですと、言葉は悪いですが、いわゆる「まだらボケ」状態ですと
日によって症状が違いますので、判断に困る時もあります。
また、お子さんとだけ会って、本人確認をしないまま契約も委任状でやってしまう
というケースも考えられます。
そういう場合は、数か月後の所有権移転登記時に司法書士から指摘され
取引が中止になる場合もあります。
司法書士さんは、所有権移転登記前に必ず本人確認をします。
認知症などが疑われる方ですと、司法書士さんは、生年月日や生まれた年の干支、
今日の日付や売買が行われるということの認識などの質問をして意思能力が
あるかないかを確認します。
また、運良く(?)所有権移転ができたとしても、後日相続が発生した時に
他の相続人から契約無効の申し立てをされる場合もありますからご注意ください。
正常な方が認知症などに罹ってしまい、亡くなるまでの平均年数は7~8年とも
言われています。その間は、成年後見制度を使うなどしない限り、その人名義の
不動産売買はできませんので、健康なうちに家族信託などをして対処しておいた方が
間違いないと思います。