相続税評価 路線価か実勢価格か? その1
路線価に基づく相続財産評価を否定?
節税なのか脱税なのか?
現在、相続の仕事をしている関係者の間では注目の裁判が進んでいます。
それは実勢価格より大幅に低い路線価に基づいて相続財産を評価することが適切か
どうかが争われている訴訟です。
概要は、ある男性が、東京都の物件(A物件)を約8億3700万円で、神奈川県の物件
(B物件)を約5億5000万円で取得。
購入時には、金融機関からそれぞれ6億3000万円、3億7800万円を借り入れています。
そして3年後にその男性が死亡。まもなく相続が開始されました。
相続人は男性の妻、長女、長男、二男、そして被相続人と養子縁組を結んだ孫の5名。
相続が開始すると、相続人らは路線価に基づき、A物件を約2億円、B物件を
約1億3000万円と評価。
2物件の合計は約3億3000万円と、購入価格の約13億8700万円に対し大幅に圧縮され
ました。
さらに金融機関からの借り入れも加味し、相続人らは「相続税額をゼロ」として
税務署に申告しました。
翌年、相続人はB物件を約5億1000万円で売却しています。
これに対し税務署は、路線価を使った相続人の物件評価を「著しく不適当」と判断し
評価額の見直しを行い、「時価は不動産鑑定評価に基づく12億7300万円が妥当」と
主張して、相続人に対して、更正処分(税務署による納税額の修正)および約3億円の
追徴課税に踏み切ったというものです。
そして1審、2審とも路線価に基づいて申告した評価額について
「不動産の客観的な交換価値を示しているかは相応の疑義がある」と指摘。
「特別な事情がある場合には路線価以外の合理的な方法で評価されることが許される」
として、課税処分は妥当だと判断しました。
これに対し、原告側は「節税の意図があったとしても、路線価によらない評価手法を
採るべき事情に当たらない」と主張。
路線価と実勢価格の隔たりが是正されていない現状にも触れ、「狙い撃ち的に特定の
相続財産を、不動産鑑定によって評価することは平等な取り扱いに反する。
恣意的な課税は許されない」と述べています。
訴訟の概要を説明しただけで長くなってしまいました。
ですので、次回になぜこの裁判が注目されるのかについてやっていきたいと思います。