孤独死と損害賠償について その2
孤独死の損害賠償請求について
故意や過失が問われる?
前回の不動産ブログの続きです。
病死であっても、孤独死のような場合で入居者の死亡後、長期間発見されずに
放置されたことによって、室内外に臭気・害虫などが発生した場合には、
どうなるのか?ということについてです。
このような状態になりますと、大家さん側に下記のような損害が発生する可能性が
あります。
・家賃の滞納
・次の募集賃料の下落
・室内の原状回復費用(通常よりも高額になると思われます)
まず、家賃の滞納がある場合は、賃料の支払い義務は、連帯保証人または入居者の
相続人に承継されます。
そのため、大家さんは入居者の相続人らに対して、滞納された賃料の支払いを
請求することが可能です。
次に、賃料の下落に伴う損害と内装費用についてですが、これがむずかしいことに
なるようです。
建物賃貸借契約においては、賃借人の故意または過失や通常の使用方法に反する使用
など、賃借人の責めに帰すべき事由による住宅の損耗があれば、賃借人がその費用
を負担するということとなっています。
ある判例では、、
”「賃借人が生活の本拠とする賃借建物内で自然死に至り、一人暮らしの場合に
その発見が遅れることは、社会通念上起こり得ないことではないから、賃借人が
貸室内で自然死に至り1か月程度その遺体が貸室内に存置されたことをもって、
直ちに賃借人の債務不履行を基礎づけることは困難である。
本件貸室内で自然死に至りその発見が遅れたことについて、入居者または遺族の具体的
注意義務違反を明らかにし、上記認定を左右するに足りる主張、立証はない。
したがって、仮に、その入居者の死亡について原告が損失を被ったとしても、
被告はその賠償義務を負わない。」”
というような例もあります。
つまり、「故意や過失」が認められるケース、例えば、遺族が亡くなったことを
知っていて故意に隠していたとか、元々近くに住んでいる家族が定期的に様子を見に来る
といった約束事があったとかというような過失が認めらない限り損害賠償はむずかしい
ようです。
また、ある弁護士の見解では、、
「入居者の遺体が腐乱したことによって生じた臭気や害虫などについては、
明らかに通常の使用によって生ずべき損耗の範囲を超えているので、入居者の義務を
承継した相続人に対して賠償を請求できる。」
という方もおります。
全く損害賠償が受けれないということではなく、かなり難しいことは確かなようですが、
ケースバイケースでその可能性も残されているといったところでしょうか?
このような事態に備えて、大家さんは、事前に「孤独死保険」に加入しておくと
いったような対応が必要かも知れませんね?