古い貸家をお持ちの大家さん、気を付けてください!
阪神淡路大震災の判例からわかること
建物所有者の賠償責任は?
今回は築年数が40年を超える古いアパート・マンションを所有している大家さんへの
お話です。
平成11年神戸地裁で出された有名な判決があります。
昭和39年に建築された神戸市内の賃貸用アパートが、阪神淡路大震災によって1階部分が
完全に倒壊し、入居者のうち4名が死亡し、複数名が傷害を負ったという事案において
遺族らが総額3億円余の損害賠償を求めて提訴したものです。
裁判所は、当該建物について、「実際の施工においてコンクリートブロック壁に
配筋された鉄筋の量が十分でない上、その鉄筋が柱や梁の鉄骨に溶接等されていない
など壁と柱とが十分に緊結されていない等」の不備があったと認定しました。
つまり、この建物が建築当時の耐震基準を満たしていなかったということです。
そして、「賃借人らの死傷は、地震という不可抗力によるものとはいえず、当該建物
自体の設置の瑕疵と想定外の揺れの本件地震とが、競合してその原因となった」ことを
認めたのです。
そのうえで、裁判所は、損害額の算定において自然力の損害発生への寄与度を割合的に
斟酌すべきとし、当該事案においては、地震の損害発生への寄与度を5割と
認定しました。
結局、裁判所は、建物の所有者に対して、自然力による寄与度の5割を控除した金額で
ある約1億3000万円の支払いを命じています。
このことは、たとえ大地震であっても建物の所有者は安全性について配慮する義務が
あり、建物の設置や保存に瑕疵がある場合は賠償責任が生じることがあるということを
広く世間に知らしめたのです。
例えば、昭和56年5月以前の旧耐震基準の建物で、何も耐震補強工事をしていない
建物を貸している場合などです。
たとえ安くても家賃をもらっている以上、大家さんは建物の使用及び収益に必要な
修繕義務を負っています。(民法606条)
こんな状態で、大地震が来て建物が倒壊して死傷者が出たら、どうなるでしょう?
そんな建物をお持ちの大家さん? 枕を高くして眠れますか?